販売テクニック

長男と二人、某絵画の展示販売展に行ってきた。現在ならまず無いが、思い返せば20年前、同販売展で〇十万の絵を購入したことがある。その時に体験した、営業マンの販売テクニックを思い出して書いてみた。
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1.軽い話から入って、相手に喋らせる

誰でもそうと思うが、商品説明などで、あまりグイグイ来られると引いてしまう。
「この作家、昔からお好きで?」
などの導入から入ってくるが、途中からは相手(=客)に話をさせる。マイナーな作家の作品である場合、来場者はマニアである場合が多い(はず)。マニアは自らを弁えて、普段からマニア知識を語る機会が少ないため、水を向けられると、堰を切ったように話をし始めてしまうことが多い。

2.知識の量と深さに驚いて見せ、相手を気持ちよくする

1.の段階で実は、8割がた負け(=購入してしまう)ではないかと思う。話し始めたマニア話に、営業マンは「よくご存じですね」と驚いて見せる。普段から話す機会のない知識について、それを披露する場を得て、しかも褒められる。こんなに嬉しいことは無い(アムロ・レイ?)。控えめに感嘆する営業マンをもっと喜ばせるため、そしてそれは自分自身の喜びであるため、より多くの深い知識が次々と口を突いて出てしまう。

3.盛り上がった末に、「もし自宅に飾るならどれ?」と訊いてみる

マニア話で盛り上がった営業マンとは、この短時間に様々を共感したと思っているため、警戒心が大分下がっている。また本人は、数十万円もする絵を、この時点で買うとは微塵も思っていない。従って話の流れから、

「もしですよ?もし、この中でご自宅に飾りたい絵があるとしたら、どれが良いですか?」

という問いにも簡単に答えてしまうことだろう。ちなみに、マニアとしてのセンスを散々褒められた客からすれば、その評価を自ら下げることなどできない。そのセンスに見合った、それなりの値段の絵を選んでしまうことだろう。

4.テーブルに座って話を始める

斯くして、自ら選んだ一枚の絵は、商談用の丸テーブル脇に飾られることになる。この時点で、客は幾ばくかの不安を抱えることになる。あれ、座っちゃったぞ??でも、買わなければ良いわけだし。

するとここから、様々な「データ」でもって、今この絵を購入することが不思議なことでも何でもないという「証明」が始まる。しかも控えめに、笑顔で。

  • この販売展における衝動買い率は、8割を超えている。
  • 人気作品は、直ぐに値段が上がってしまう。恐らく間もなく、この絵も100万円を超えるだろう。
  • 月々の支払いは1万円程度であるため、学生でも購入する方が多い。

とにかく「今買わなければ、二度と手に入らないかも」といった、限定商品(?)に対する焦りを煽られる。しかも、皆が同じような買い物をしていて、あなたがこれを買うことに何の不思議もないという話の構成になっている。話を熱心に聞いてもらった人は、相手の話もまた熱心に聞いてしまうのだろう。これを買わねば!という気持ちが、どんどん高まっていく。

5.購入してしまう

頭の中では今後の収入予定と、今回の購入で追加される支払予定が計算され始める。どうやら買えるかも?そう思ったらもう、買う以外の選択肢はないだろう。
笑顔で、商談成立の握手を交わすしかない。


もちろん、全員がこのパターンに当てはまるわけではない。しかし購入経験がある身としては、振り返ってみると、営業マンの販売テクニックが多く盛り込まれていたように思う。同営業マンに対し、恨んだり非難したりする思いは無い。今もその絵は、飾って楽しんでいるわけだし。

以上、参考まで。