カマキリのうんこが動いた!

今から何十年も前の、小学生低学年の頃の思い出です。

当時、私は友達とカマキリを捕まえて遊んでいました。すると突然、カマキリの
おしりから細長く黒いものが勢いよく飛び出し、ウネウネと動き始めたのです。
誰も見たことのない光景に、私たちは思わず叫びました。

「カマキリのうんこが動いた!」

帰宅して家族にも話しましたが、詳しい反応は覚えていません。
おそらく、大人も知らない現象だったのでしょう。

それから何十年か経ち、カマキリに寄生するハリガネムシの存在を知ったとき、
私は二度目の衝撃とともに、強い納得と感動を覚えました。

人は未知の体験をしたとき、まず既知の範囲で解釈します。
それが誤解であっても、その時点では自然な理解です。そして後に、新たな知識によってその解釈は更新されていきます。

重要なのは、誤解は不正解であっても無価値ではない、という点です。
それは「次の理解」に至るための仮説です。

少し視点を広げてみます。

崖の断面から現れた巨大な骨(恐竜の化石)を見たとき、古代の人々がそれを
「竜」と解釈したとしても不思議ではありません。完全ではない理解であっても、「何かがある」という認識は残り、語られ、引き継がれていきます。

  • 竜という存在を信じる
  • 物語として語り継ぐ
  • 正体を探ろうとする

こうした関わりの中で、理解は少しずつ更新されていきます。

知識は重要です。しかし、知識を蓄積するだけでは十分ではありません。
知識は本来、「仮説」として扱われて初めて機能します。

組織に置き換えると、

  • ベテランの常識:過去の最適解
  • 若手の違和感:次の改善の種
  • 組織のルール:過去の最適解に基づく仮説の集合体

と捉えることができます。

衰退する組織は、過去の最適解を「結論」として固定し、そこに至った理由を
失います。気がつけば、「なぜやっているのか分からない作業」が増え、誰も
疑問を持たなくなります。やがて思考が止まり、変化に対応できなくなります。

一方で発展する組織は、それらを「仮説」として扱い続けます。
「今が最適とは限らない」
という前提のもと、小さな違和感を見逃さず、問い直し更新を続けます。

現在、多くの企業で技能伝承の重要性が叫ばれています。
手順書や動画で残すことも有効ですが、それだけでは不十分です。
手順だけでなく、「なぜそうするのか」という仮説ごと引き継ぐこと。
それが失われたとき、伝承は単なるコピーとなり、やがて劣化します。

では、自分たちの現場はどうでしょうか。
「なぜやっているのか分からない作業」は、増えていないでしょうか。
小さな違和感を見逃さず、問い続けること。
それこそが、技能伝承を“再現”から“進化”へ変える鍵になります。